日本茶
日本茶には色々な品種があり、
令和元(2019)年時点で約120種もの品種が存在し、
大別すると次の3通りに分けて扱われます。
そして、この品種を合計すると、60種類以上にもなります。
- 農林水産省登録品種
緑茶用、紅茶用に国や県が育成し、
農林水産省に登録したもの。 - 県で独自に育成し、
その県に限っての推奨品種としたもの。 - 民間で育成し、種苗登録したもの。
現在、お茶は東北南部から沖縄の各地で栽培されています。
各地域の農家は、
栽培地域や用途に適した品種を選び、栽培しています。
最も多く栽培されているのは、「やぶきた」です。
その作付面積は、全国の茶園の70%以上を占めます。
<品種別の茶園面積(平成26年度)>
- やぶきた :74%
- ゆたかみどり:6%
- さえみどり :3%
- おくみどり :3%
- さやまかおり:2%
- かなやみどり:1%
- あさつゆ :1%
「やぶきた」は、
明治時代に静岡県の杉山彦三郎によって選抜されました。
品質が良くて収量も多い上、
栽培地を選ばない順応性と耐寒性の高さが特徴です。
凍霜害を受けにくい時期に萌芽するので、
凍霜害を防ぐノウハウがなかった1960年代に広まりました。
茶園では、生産するお茶の種類で品種を選んでいます。
煎茶なら色や香りのよい品種を選び、
「かぶせ茶」や「碾茶」なら、
遮光しての栽培にも順応する品種を選ぶといった具合です。
また、品種には
「早生種」「中生種」「晩生種」の種類があります。
これらの種は成長の進度が異なり、地域差もありますが、
「早生種」は5月前に、「中生種」は5月頭前後に、
「晩生種」は「中生種」の約2週間後に収穫期を迎えます。
最近は、やぶきた一辺倒にならないように
新たな品種に植え替えたり、個性的なお茶を求める動きに合わせて、
希少品種を育てたりする生産者もいます。
日本のチャの品種は、
現在人の嗜好にあった味を求めて進化を続けているのです。
主な品種
やぶきた
品質が高くて収量が安定し、寒さに強いため、
ほとんどの栽培地に適応します。
香りはリフレッシュで味が濃い。
品質審査の基準にもなっています。
「中生種」です。
ゆたかみどり
さえみどり
おくみどり
さやまかおり
かなやみどり
- 昭和45(1970)年登録
- 「やぶきた」より4日晩生、「中晩生品種」
- ミルクを連想させるような甘い香りが特徴
- 主産地:鹿児島県と静岡県など
あさつゆ
つゆひかり
天然の玉露と言われる「あさつゆ」と
爽やかな桜餅のような香りを持つ「静7132」を掛け合わせた品種。
静岡県の奨励品種に指定されている。
水色は明るい緑色で渋みが少なく、
すっきりとした甘さと、独特な香りが特徴。
おくひかり
「やぶきた」とChinaの品種を掛け合わせて誕生した品種。
耐寒性に優れ、茶葉は硬く引き締まった形になりやすい。
やや渋みを感じますが、清涼感がある。
香駿(こうしゅん)
静岡県茶葉試験場で、
「やぶきた」にルーツを持つ「くらさわ」と
「かなやみどり」を掛け合わせて作られた品種。
ハーブのような爽やかで清涼感のある香りで、
桜のような花香の余韻もあり、女性に人気。
生葉の萎凋処理により、
香気が高まってバラのような甘い香りが出てくるので、
最近はそのように作ったものが増えている。
せいめい
- 平成29(2017)年登録
- 「やぶきた」より4日早生、「早生種」
- 旨味が強く、渋みが少ない
- 新芽は鮮やかな緑色で被覆適性があるため、
かぶせ茶、抹茶などの高品質緑茶
「碾茶用」の品種の多くは、京都で栽培されています。
あさひ
京都府の平野甚之丞によって選抜された宇治在来種。
まろやかな味が特徴の高級抹茶。
早生品種で、収穫に適した期間は短く、
それを逃すと品質の低下が著しいため、収穫量が少ない品種。
抹茶の中で「あさひ」と言えば、最も高価。
さみどり
- 京都府宇治の在来種、小山政次郎が選抜した品種
- 「中生種」であるが適期幅が大きい
- 碾茶:冴えのある深緑色で色むらが少ない仕上がりに
煎茶:甘さが感じさせる香りに - 被覆栽培での特性に優れ、高品質の玉露や碾茶になる
- 宇治品種
ごこう
宇治の在来種から選抜され、育成された品種。
玉露用、抹茶用。
旨味が強く、ミルクのような甘い香りが特徴。
うじひかり
京都の中村藤吉が育成した在来種を
京都府立農業試験場茶業研究所が選抜した、
碾茶・玉露用の品種。
あっさりとした中にもコクのある味わいで人気です。
展茗(てんみょう)
「さみどり」の自然交雑から生まれた品種。
「さみどり」と同等の収穫量で、
鮮緑色が美しく、覆い香に恵まれています。
他の碾茶・玉露用品種より早く、4月の終わり頃から摘まれます。
鳳春(ほうしゅん)
「さみどり」の自然交雑から生まれた品種。
新芽が直立するため、機械摘みに向いています。
玉露用品種として期待されています。
べにふうき
紅茶用の品種「べにほまれ」と「ダージリン」を
交配してつくられた茶種。