優しいのみもの

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やぶきた(藪北)

日本茶・茶葉

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お茶の品種はおよそ100品種近く農林水産省に登録されています。
その中で作付面積が約75%以上と、
最も多く栽培されているのが「やぶきた」です。
正に、日本茶の代名詞とも言える品種です。
 
日本の気候風土において、育てやすく殖やしやすい品種で、
旨味、渋味、香りともにバランスが良い優れた品種であることから、
煎茶や深蒸し茶、玉露など幅広く親しまれています。
 
 

歴史

 
「やぶきた」が誕生したのは明治時代。
それまでは「在来」といって、
以前から自生していた茶の木を栽培していました。
「やぶきた」は誕生後、徐々に広まり、
時間をかけて昭和になって普及しました。
 
「やぶきた」の生みの親は
杉山彦三郎(すぎやま ひこさぶろう)という静岡県の人物です。
杉山は明治41(1908)年、
静岡県有渡郡有度村中吉田(現在の同県静岡市駿河区中吉田)の
津嶋神社前にある所有地の竹藪を開拓して茶畑を造成します。
そして、成長した茶の木の中から優良な2本を選抜しました。
2本のうち1本は、竹藪の北の方にあったので「やぶきた(藪北)」、
もう1本は竹藪の南の方にあったので「やぶみなみ(藪南)」と
命名しました。
その後も2本の実験と観察を続け、
やがて「やぶきた」がとても優秀な茶の木であると気付きます。
杉山は「やぶきた」の品種改良を続けた他、
「やぶきた」以外にもおよそ100種にも及ぶ優良品種を生み出し、
昭和16(1941)年にこの世を去ります。
彼の死後、静岡県立農事試験場での茶の育成比較試験で
「やぶきた」は高い評価を受け、
昭和20(1945)年)に静岡県の奨励品種に選ばれ、
更に昭和28(1953)年、農林水産省の登録品種に指定されると、
これをきっかけに「やぶきた」は全国に普及していきました。
 
「やぶきたの母樹」
静岡県の天然記念物に
杉山彦三郎が「やぶきた」と名付けた
1本の茶の木を見つけたことから始まった品種の歴史。
杉山が見つけた「やぶきた」の母樹は、
発祥地である中吉田の隣の谷田地区、
静岡県立美術館前通り沿いの
谷田宮の後公園に隣接地へ移植され、
「杉山彦三郎記念茶畑」として保存されています。
静岡県の天然記念物に指定され、
老木となった現在も大きく茂っているそうです。
同茶畑では、杉山が各地から収集した
100種以上ある中の13種も植えられていて、
地元のボランティアが管理しているのだそうです。
また、「やぶきた」発祥地となった茶畑の隣の津嶋神社には
記念碑が建立され、彼の功績を称えています。
 
 

やぶきたの特徴

 
「やぶきた」は、
茶農家・流通業者に安定した収穫が出来るとして認められ、
味が消費者の好みと適合したことで高い評価を受けました。
 
 
育てやすい品種
「やぶきた」の特徴の一つとして「耐寒性の強さ」があります。
赤枯れや青枯れ、凍害に強い性質を持っています。
 
また根付きの良さも特徴で、
様々な土壌に対応出来る「適応性の高さ」もあります。
 
根や芽の出方が「均質」の上、「成長が速く」、
「植え替えもがしやすい」という利点もありました。
そのため「育てやすい品種」として農家から高い評価を得るに至ります。
 
また、茶は挿し木により、
ほぼ同じ性質を持つ樹を増やしていくことが出来ます。
茶の品種が作られる以前は、
種から育てる「実生」(みしょう)の樹を栽培していたため、
樹によって性質が異なり、
品質が安定しないという欠点がありました。
更に収穫まで3〜10年と、
農作物としては比較的長いスパンを要しました。
 
畑に植える木を考える必要がある茶栽培において、
「やぶきた」という優秀な品種の登場により、
安定的な品質が期待出来る標準的な品種として「やぶきた」は
農家や流通業者から注目されました。
 

 
一方で、「やぶきた」の爆発的な普及により、
栽培品種が大きく偏りが生じているのは事実です。
収穫が短い期間に集中し、摘み遅れによる品質の低下や、
作業者の過重労働、非効率な製造、品質の均一化による魅力低下などの
デメリットも生じてきています。
 
最適な摘採時期より数日遅れれば、葉は硬くなり品質は大きく低下します。
また農家さんが一日で摘むことが出来る量には限界があり、
数日で全ての茶畑の新芽を摘み、すぐに荒茶に加工することは不可能です。
春先は雨の日も多いため、やむを得ず摘採出来ない日もあります。
結果、大きく育ってしまった茶葉は、
収量としては増えますが、品質は大きく低下してしまいます。
 
そのため、「やぶきた」と比べ「早生品種」や「晩成品種」も栽培して、
収穫時期をずらすことで
効率良く、品質の高い茶葉を摘むということが推奨されています。
 
 
日本人の好みにフィットした味と香り、そして水色

 
煎茶としての品質も極めて優れています。
消費者に好まれる香りあり、きれいな緑色が出やすい。
味は甘みと渋みのバランスが良く、香りとコクがよく味わえる。
この「やぶきた」の味が多くの日本人の好みにフィットし、
飲み慣れた味となっていきます。
 
 

和紅茶

 
「やぶきた」は緑茶用の品種ですが、
昨今の「和紅茶」ブームから、
「やぶきた」を使った紅茶作りにチャレンジされている
茶園さんも多くいらっしゃいます。
紅茶品種ではないので、
「渋味少なめ、飲みやすい。日本人好みの紅茶。」と評価される一方、
海外の紅茶が好きな方の中には、
「甘過ぎる。正直少し物足りない。」とも言われています。
 
ただ、紅茶の選択の幅が広がるのは、
日本茶、紅茶、更には茶外茶、ハーブティーともに好きな私にとっては
うれしい限りです。
どんなに紅茶好きと言っても、
どこの紅茶でもいいっていう訳じゃありません。
苦手な産地ってありますもの。
それに、日本産は安心です。