優しいのみもの

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美味しい紅茶づくりには欠かせない虫「ウンカ」

紅茶の茶葉 

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「ウンカ」は体長5mm程の羽のある虫で、漢字だと「雲霞」と書きます。
「ウンカ」という種類の虫がいるのではなくて、様々な虫の総称です。
例えば、アブラムシもウンカの1つです。
 
「ウンカ」は、稲の葉や茎から汁を吸って枯らしてしまう、
田んぼの害虫のナンバーワンです。
繁殖力が強く、田んぼの一部に穴を開けたように稲を枯らしたり、
ひどい時には田んぼを全滅させたりすることもある恐ろしい害虫です。
「ウンカ」は、江戸時代の享保天保の大飢饉を引き起こした
原因の一つとも言われています。
 
 
米作りでは害虫の「ウンカ」ですが、
紅茶づくりの現場では、むしろ歓迎される益虫なんです。
ダージリンの2nd Flushと言えば「マスカテルフレーバー」ですが、
この「マスカテルフレーバー」も、実は「ウンカ」により作り出されるのです。
 
 
ダージリン地方の5月は雨期ですが、
6月になると激しい雨が止み、「ウンカ」が大量発生します。
大量に発生した「ウンカ」は、茶葉の柔らかい部分から汁を吸います。
汁を吸われた茶葉は、黄色く変色し、その部分だけを摘みとって加工すると、
あの「マスカテルフレーバー」になるのです。
ウンカにより攻撃を受けた茶葉は、それに対抗するため、あるいは治癒するために
人間の抗体に当たる物質「ファイトアレキシン」を作り出しますが、
これらが香りの正体です。
 
「ファイトアレキシン」(phytoalexin)とは、
植物が生物ストレスおよび非生物ストレスに応答して
新規に合成する、抗菌性の二次代謝産物の総称である。
非宿主抵抗性の一環として機能し、広範囲の病原に対して有効であり、
植物種ごとに様々な種類の化合物が存在する。テルペノイド、グリコステロイドおよびアルカロイド等を指すことが多いが、これらに限らず植物の抵抗性反応に関わるファイトケミカル全般をファイトアレキシンと呼ぶことが多い。
ファイトアレキシンの合成には、きっかけとして微生物やそれらが作り出す化合物、紫外線などのエリシターが必要であり、通常の生育条件にある健康な植物体では合成されない。

Wikipedia

また、最近注目の台湾紅茶「蜜香紅茶」も
「ウンカ」が汁を吸った茶葉のみを集めることで作り出されます。
台湾は、日本統治時代、緑茶を生産していましたが、
「ウンカ」の害にあった茶葉をどうにかして製品にしようとする中で生まれたのが
「東方美人茶」です。
 緑茶にとっては害虫である「ウンカ」も、紅茶には益虫だったのです。
 
 
「ウンカ」は茶園の何処にでもいる訳ではないので、
「ウンカ」がいる畑は大事に虫を守るそうです。
茶園のマネージャーはその場所を良く把握し、そこから収穫された茶葉に関しては、
「特別扱い」をしなければなりません。
「ウンカ」に噛まれた茶葉は普通の茶葉と比べ、水分量も少ないため、
普通の茶葉と同じように加工出来ません。
萎凋時間や発酵時間に関し、特殊な調節をしなければならないのです。